Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「は?違うのか?

本当に?え?じゃあ何の話を、、、?」

こんなに混乱しているフォルティスは初めて見たと思う。

「ふふふふっ。」

「笑うなよ。すごい焦ったんだぞ?」

額の汗をぬぐって、じとっとした目でふくれながらこっちを見る。

「ごめんなさい、勘違いさせて。

今すぐOKはできないけど、もう少し待ってほしいって話そうと思ったの。」

かわいいと思いながらも、言い方がおかしかったのだと反省する。

「俺は余裕なんて少しもないんだからな。

でも、困らせる気はない。

いつまでも待ってるって言っただろう?

断る以外の選択肢なら何でもいいんだよ。」

フォルティスが余裕ないなんて、ありえない。

「うそ、、、。

いつだって余裕そうに見えるわ。

私が恥ずかしくなるような言葉もさらっと言うし、いつも笑顔だし。」

「それは、かっこよく見てほしいからだよ。

いろんな情報を集めて、一回下見に行ったことだってある。

リリが何を好きなのか分からないから、リリの侍女のマリンに、何回アドバイスをもらったか数え切れないくらいだよ。」

プレゼントのものも、そうだったの、、、

だからドレスの寸法が分かったのね。

「それに、好みをカイに聞いたり、流行りの場所を部下たちに聞いたり。

はぁ。

ここまで全部打ち明けたら、ただのカッコ悪いやつになっただけだな。」

そう言って、フォルティスは頭を抱えて項垂れてしまった。

「ちょっとごめんね。

今すごくびっくりしてて、何て返事をしたらいいか分からないよ。」

驚いて、言葉が出てこない。

「引いた、よな。

がっかりしたか?」

泣きそうな、すがるような顔をする。

「してないわ!嬉しかったもの。

そこまで私を喜ばせようとしてくれたことが。」

そんな、誤解を解きたくて必死に伝える。

「本当に、リリはいい人だよ。

こんなに周りの人に助けてもらっていたやつなんて、卑怯だろ。

好かれようと必死だったのを、取り繕っていただけなんだ。」

「そこまで言わないで。

私は卑怯だなんて思わないから。

私が何をしたって笑ってくれて、私のことをよく見ていてくれて、ほしい言葉をくれたのはあなたよ。

他の人からアドバイスをもらったかもしれないけれど、それ以上に、あなたのくれる言葉が嬉しかった。

それじゃダメなの?」

「いや。ダメじゃない。ダメじゃないよ。

俺は、本当にリリのことを好きになって、良かった。

こんなに好きになると思わなかった。

再会したときよりも、もっと好きになった。」

熱い目を見ていると飲み込まれてしまいそう。

「ねぇ、好きってどうしたら分かるの?

一緒にいて楽しいのと何が違うの?」

我ながら子どもっぽい質問だ。

「そうだなぁ、、、。

触れたい、とかもっと近くにいたい、とか。

その人のことを理解したいと思ったりとか。

後は、笑ってほしいかな。俺は。

リリに自分の隣で。」

片手で私の手を握り、もう片方の手で撫でてくれる。

こんなふうに言われたら、愛されていると認めざるを得ない。

「好きなら、相手のことを知りたくなるってことなのね。

私、でもフォルティスの隣は居心地良くて好きよ。

なんだか安心できるんだもの。」

「もう少し、なのかもしれないな。

リリが俺のことを大好きになるのも時間の問題ってことだ。待ち遠しいな。」

急に自信げに顔を近づけられてどきっとする。

「そ、それは分からないわ!

だ、だってまだ好きって言われてもピンと来ないもの。」

なぜか言い返してしまった。

「じゃあ、ご令嬢たちと踊ってみたら嫌でも嫉妬してくれるかな。

試してみるか?」

にやにやが止まらないといった様子のフォルティスに乗せられて、勢いよく恥ずかしいことを答えてしまった。

「それはダメ!

あなたはダンスの時の距離が近いから、勘違いさせてしまうわ。

嫉妬なんてしたくない。だからだめ。」

「自分は好きか分からないし、簡単に嫉妬させるくせに、俺にはダメだなんてわがままだな。

まぁ、そんなことろもかわいいと思ってる俺は惚れた弱みなんだろうな。」

そう言って口を尖らせたフォルティスは、撫でたいくらいかわいかった。

本人には言えないけれど。

「嫉妬させたつもりはないのよ。

ごめんなさい。気をつけるわ。」

しょんぼりとして謝ると、頭を撫でくりまわされる。

「じゃあもう、今日の踊る人数を決めようか。

最初が俺。3人まで踊ってよし。

それで、最後も俺。これでどうだ?」

「私はそれでいいわ。

でも、フォルティスも距離感に気をつけてちょうだい。」

「これでも嫉妬してないって言うんだもんな。」

ボソッと言ったフォルティスの言葉は聞こえなかったけれど、嬉しそうなのが表情から分かる。

恥ずかしさが、込み上げてくる。

「私は相手の女性のことを考えて言っているのよ!」

「分かってる、分かってる。

じゃあ、君も踊っているときにあまり相手と目を会わせるなよ。

君の身長では上目遣いになるからな。

俺のこれは嫉妬だ。

もし、破ったなと思ったら次からは袖あり、襟つきの露出なしのドレスだからな。」

冗談か本気か微妙なところだ。
< 18 / 51 >

この作品をシェア

pagetop