Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
そっと手を取って、馬車から降ろしてくれたフォルティスの機嫌をどうやって戻すか、一生懸命考えた。

どうにも分からないので、直接聞こうと思う。

「ねぇ、フォルティスごめんなさい。

私、あなたの隣に立っても恥ずかしくないような格好をしたかったの。

それなのに、あなたの嫌がることをしたら、意味がないって気づかなかった。

どうしたら、許してくれる?」

精一杯、伝えたつもりだけど、伝わったかな?

「俺は別に怒ってるわけじゃなくて。

リリの希望を尊重したい気持ちと、見せたくないって気持ちの葛藤が止まらなかっただけ。

むしろ、自分の都合ばっかりでごめんな。」

弱々しく謝られて、悲しくなる。

「そんなことないのに。じゃあ、仲直りしよ?」

意味の分からないことを、提案してしまった!と後悔していると、柱の陰に引っ張られて、少し強引に口を塞がれた。

「仲直りね。」

上機嫌に微笑んだフォルティスはすごくカッコよかったけど、恥ずかしい。

「人前だよ!?」

「当たり前だろ。

そうじゃなきゃ、1回でなんてやめないよ。」

平然と言い返されて、驚きのあまり言葉が出ない。

「あーあー、ほら赤くなっちゃって。

入るから、落ち着いて。」

心のなかで、誰のせいだと思ってるのよ!と言いながらも、微笑み返す。

大広間に入り、階段を降りて中央に向かう。

フォルティスと壇の上に座っている、王族の方々に挨拶をする。

まだ、カリオス帝国の一行は姿を見せていないので、後ですることにして、フォルティスと2曲踊った。

ファンファーレが鳴って、賓客用の扉からカリオス帝国第一王子のシェヴァ王子が入ると、拍手が響き渡る。

3年前に友好関係になってから、交流が続いている。

王様とがっちり握手をしてから、ダンスフロアに降りてくる。

大勢の令嬢たちに囲まれ、挨拶をされている。

私たちも遠巻きながら、一応礼をとる。

集団の中の、1番最初に声をかけた高慢そうな女性の手をとり、踊り始める。

さすがに、王子なだけあって、優雅な様子。

私もフォルティスとだけ踊るのを止め、声をかけられた人たちと踊ることにする。

2人と踊って、3回目に囲まれたとき、後ろの方から声をかけられた。

「待ってくれ。

咲き誇る薔薇のようなレディ、私と1曲お願いできますか?」

まさかの、シェヴァ王子だった、、、

断る理由もなく、少し緊張しながら踊ると名前を聞かれた。

「レディ、お名前をお聞かせ願えますか?」

「スタゴナ公爵家のリリアンヌと申します。

以後よろしくお願いいたします。」







「お互いに連続で、踊り過ぎましたね。

さすがに少し疲れました。

共に風にあたりに行きませんか?」

そう誘われて、少し辺りを見回して探すけど、残念ながらフォルティスの姿を見つけることはできなかった。

仕方なくうなずいて、ついていきテラスに出た。

「ここの王宮の庭園はいつ見ても、花が美しい。」

「ええ、国1番だと言われていますから。

国中の美しい花が集められているのです。

どの時期に来ても、違う表情を見せてくれますよ。」

意外にも、お母様が花の手入れを趣味にしていたそうなので、花の話で盛り上がった。

「そうだ、私の泊まっている離宮も、石造りの池と花が、すごく合っていて、風情がありました。

見たことはありますか?」

「いえ。

機会がなくて、離宮でのパーティーにも参加できてないんです。

残念ですわ。」

「でしたら、一緒に見ませんか。

公務があるわけでもないので、日中は暇しているんです。」

もしかして、口説かれている?と思った時には、もう遅く、ピンチになっていた。

慌てて、微妙に受け流すしかなかった。

「警護の問題もありますし、どうでしょう。

もしかしたら、難しいかもしれませんね。」

苦しい言い訳だなと思うと、やっぱり言い返された。

「うーん、僕の国の警護もいるので、大丈夫だと思いますが、一応こちらの国の方に伺ってみますね。」

結構強引に話を進められ、断れなくなってしまった。

フロアに戻ると、さらっと王様夫婦に声をかけて、何かうなずいてもらったと思ったら、笑顔で振り向き、指で丸を作った。

こちらも微妙に微笑み、お辞儀をした。

そんな間にも、フォルティスの姿が見つからなくて、不安になる。

何かまた、巻き込まれてないといいんだけど。

階段を颯爽と降りて、横に笑顔で立つ。

「すぐにOKしてもらえましたよ!

明日とかだと、すぐ過ぎますか?

予定、教えてください。」

なんだか圧されてしまって、ペースに乗せられている。

「明日は大丈夫ですが、明後日は予定が入っていて。」

「私も明日は大丈夫なので、午後にでもどうですか?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「では、楽しみにしていますね。また明日。」

そう言って、去っていった後ろ姿にそっとため息を吐く。

フォルティスを本格的に探そうと、ホールを出て、近くにいた騎士の格好をしている男性に尋ねる。

「すみません、フォルティスがどこにいるか知りませんか?

会場にはいなくて。」


そこで、じっくり顔を見られたかと思うと、近くにいた先輩を呼んだ。

「先輩!この方でしょうか!?」

「あ?

あぁ、そうだ!リリアンヌ嬢!

良かった、いらっしゃって。

お手紙を預かっていますので。どうぞ。」

フォルティスからの小さなメモを渡された。
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