「フォルティス、大丈夫だからお仕事に戻って。

私も1泊して帰るから、明日の夜ゆっくり話そう。

心配かけてごめんなさい。」

そう言ってそっと手を握ると、ちらりと目を合わせて微笑んでくれた。

「分かった。待ってるよ。

行ってらっしゃい、気を付けてな。

皆さん迷惑をかけました。申し訳ない。

彼女をよろしくお願いします。」

そう言って、護衛の人たちにお辞儀をすると私の右のほっぺに軽くキスをして、馬車に乗り込むエスコートをしてくれた。

改めて出発することにして、窓から少し身を乗り出してフォルティスに手を振った。






「まさか、フォルティス様がここで追い付くとは誰も思っていなかったでしょうね。

デガン様から、出掛けに間に合わなければ帰ったとき、機嫌の悪いフォルティス様が出迎えるだろうけど、マリンに任せたと言われていたのです。

出発するときにフォルティスがお戻りにならなかったので、帰りは覚悟していたのですが、まさか今このタイミングで来るとは思いませんでした。

それでも、良かったですね、リリアンヌ様。」

少し飽きれているような様子だけど、それはしょうがないことだ。

「えぇ、仲直りできて良かったわ。

それにしても、護衛の人たちは、あんな登場をしたフォルティスが騎士団の団長だとは思わないわよね。

すごくびっくりしていたわ。面白かった。」

なんだかんだで自分の中から元気が沸いてきたのが分かる。

自分って意外と単純な性格をしているんだなと思った。









「まぁ、リリちゃん!キレイになったわね!

早くいらっしゃい!待ちきれなかったのよ!」

結婚しても変わらない美しさのシェリー様は、横の侍女の制止を振り切って馬車から降りた私に向かって飛んできた。

「お久しぶりです!シェリー様!

急に来てしまってごめんなさい。」

「いいえ、暇だったからいいの。

さぁさぁ、中に入って!

たくさん甘いものを揃えてあるのよ!」

ぐいぐいと客間に引っ張られ、センスのいい北欧の優しそうな雰囲気の部屋に入った。

「ここの客間は、、、?」

1度も入ったことがないところだ。

「あら、リリちゃんはまだ入ったことなかったわね。

ここは私個人の客間よ。

2・3人の親しい人を呼んで、おしゃべりしたりするの。

私の趣味がつまっているのよ。」

嬉しそうに、暖炉の上にある飾り棚の縁の模様を撫でながら教えてくれた。

「落ち着きます、この優しい雰囲気。

向こうのおうちのお部屋もこんな感じなんですか?」

すると、少し寂しそうに答えてくれた。

「いいえ、彼には言いそびれたの。

彼が私のためにって用意してくれた家具が全て無駄になってしまうのも嫌だったし、用意してくれたことが嬉しかったのもあって言い出せてないの。

だから、ここに泊まることになってもこの部屋にだけは呼んでないのよ。

ここは私の秘密の花園。

だから、誰にも言わないでちょうだい。」

優しい表情は彼を思い出しているんだろうなと分かる。

「分かりました。誰にも言いません。

ですが、シェリー様はいいのですか?

自分の好みを抑えているのは辛くならないのですか?」

「えぇ、でも少し後悔しているの。

彼に言うタイミングを逃してしまったから、今さら言うのはどうかと思っちゃって。

わざわざ掘り返して言うのは、なおさら傷つけてしまう気がするの。

だから、恥ずかしいけれど、このことは絶対に言わないし、彼にはそんな素振りを少しも見せないと決めたの。」

シェリー様の話を聞いていたら、デシャブに感じた。

フォルティスももしかしたら、言い出しづらかったのもあるかもしれないけれど、やましい気持ちがあるわけでもないから、私のために隠し通そうとしてくれていたのかもしれない。

都合のいい解釈だけど、シェリー様のように優しさゆえに、ということもあるのかも。







私はフォルティスの馴れ初めをたっぷり聞き出されて、へとへとに疲れた私は夕食前にお風呂に案内してもらった。

夕食も豪華に季節の食材を使っていてどれも美味しかった。

食後のケーキはタルト台からこぼれてしまいそうなほど果物が乗ったタルトで、思わず食べ過ぎてしまった。

これでそれぞれ就寝、かと思いきや恋バナをするのだと、シェリー様の寝室に連行された。



「ねぇ、フォルティス様はどんな人なの?

2人でいるときは。」

4人は広々と寝れるだろうベッドに2人で入り、唐突に聞かれた。

「2人でいるときですか?うーん、、、

将来の話をまじめにすることもあれば、ずっとくっついてるときもありますし、時々弱音を吐いてくれたりしますね。

なので、外では頼れる次期公爵様とか、騎士団のエリート様って感じが全面に出てますが、いつもは普通の恋人みたいですかね。」

私、まじめに語りすぎた気がするわ。

シェリー様がじっと聞いててくれるから語ってしまった。

びっくりしたように固まっていたシェリー様が肩を震わせて笑い始めた。

「リリちゃんは本当にフォルティス様が好きなのね。

想像より仲良しで心を許しあっていてびっくりしちゃった。

いつか、会いに行くわ。

2人がラブラブしているのを見に。」

ラブラブって、、、

面と向かって言われるとすごく恥ずかしい。

「シェリー様はどんな感じなのですか?」

「シオンと?」

「はい、結婚の先輩として教えてください!」

シオン様は、カリオス帝国の隣国の島国アトランテスの国王様だ。

まだ19歳のときに王位を継承して、シェリー様と結婚した。

「うーん、私たちはたぶん独特なのよね。

王族によくあるような政略的な結婚じゃなくて向こうの一目惚れからだから、彼は私のことが大好きなの。

年も私の方が2つ上だしね。」

「まぁ、一目惚れですか?

物語みたいですね!」

「えぇ、びっくりでしょう。

いろいろあって大変だったのよ。」

昔を懐かしむように遠いところを見ていたシェリー様はすごく幸せそうだった。

「あの、いちゃいちゃしてますか?」

我ながらもう少し抽象的には聞けなかったのか。

「あはははは。

してるわよ。向こうが急にキスをしてくるときもあるし、私から催促するときもあるわ。

リリちゃんたちはないの?」

質問返しされるとは思っていなくて顔から火が出そうだ。

「フォルティスがちょくちょくしてくるんですが、私が慣れてないのもあっていっぱいいっぱいになってしまうんです。

どうしたらいいんでしょうか。」

いつもいつも余裕がなくなってしまって、自分だけ満足している気がするのだ。

フォルティスは私に合わせているだけで、満足してくれているのかわからない。

「あら、そんなの簡単なことよー。

嫌だったり面倒だったら、わざわざキスなんてしないわ。

彼もリリちゃんとキスしたいのよ。

だったら、リリちゃんもフォルティス様が喜ぶようなことをしてあげたらいいのよ。」

安心したけれど、具体的に何をするのかわからない。

どんなに自分が恋愛偏差値が低いのかわかる。

首をかしげていると、シェリー様がにやにやしながら教えてくれた。

「甘えてあげるのよ。

好きだなぁ、と思ったら抱きついちゃえばいいし、キスだってテクニックがなくてももう1回って頼んでみるだけで全然違うと思うわ。

恥ずかしがらないでやってみたら、きっと大成功するわよ!」




それが恋ばなの最後の話となって、そろそろ日付が変わるとマリンが呼びに来てくれた。

部屋に帰ってベッドに潜り込むと、あっという間に眠ってしまった。






シェリー様にたくさんのプレゼントを頂いて、別れの挨拶をする。

「シェリー様、ありがとうございました。

たくさん話が聞けて良かったです!

今度はぜひこちらに、遊びに来て下さい!」

「えぇ、もちろん行くわ。

できたらシオンも連れて行きたいわ。

きっとリリちゃんが喜ぶようなお土産を入れておいたの。

後でこっそり見てみて。」

キレイにウインクして笑ってくれた。

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