異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
さようなら監獄、こんにちは終末
寒い…………。
すごく寒い…………。
大きな鉄板に掴まりゆらゆらと揺られながら、私は寒さで目を覚ました。
辺りには霧が立ち込め、空は分厚い雲に覆われて、見渡す限りどこまでも続く群青色の大海原が容赦なく絶望を押し付けてくる。
水に浸かっている腰から下の感覚がなく、鉄板に掴まっている手も悴んで上手く動かない。
おまけに只でさえ重量のある巫女装束が水を吸って重くなり、肌に貼り付いて体温を容赦なく奪っていくのだ。
私は震える体で辺りを確認する。
ここが何処かはわからないけど、海神島の近くではないことはすぐにわかった。
島から出られたのかな……。
でも、島から出られたとしても、このままでは確実に低体温で死ぬわ…。
誰だか知らないけど『お前に自由を与えよう』なんて言うならちゃんと行き先の安全も確保しておいてよね!!
…それにしても…………寒い!!
ダメだ、怒ったら体力使っちゃった……。
寝よう………そうだ、もう、眠ってしまえ……。
波の揺れに身を任せ、私は面倒臭くなって目を閉じ……たら死ぬ!マジで死ぬ!!
せっかく島を出られて、これからだって言うのに、死んでたまるかっ!!
私は前後左右に頭を振り必死で探した。
そう、海の生き物を。
何か生きてるものを見つければ話が出来るし、助け手になるかもしれない。
プランクトンくらい浮いてないかな?
いや、プランクトン……と意志疎通って出来るの?
やったことないけど……なんでもいい!
寒くて歯が噛み合わず、うまく喋れない私は、頭の中で強く強く念じる。

(お話出来る子、誰か来てぇー!!)

1秒、2秒、3秒。
波の音しか聞こえなかった世界に、不意にコポッコポッと言う音が聞こえ、次に大きなコブが海中から姿を現した。
なんだこれ?そう思ってじっと見ているとコブの下から円らな目が覗いている。
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