ストーカー
あれは高校入試の日だった。


入試は高校の教室内で行われるため、あたしは今通学路となっている道を歩いていたんだ。


その時、小さな溝を覗き込んでいる男子生徒を見つけた。


あたしと同じくらいの年齢の子が、溝に手を突っ込んで何かしているのだ。


「なにしてるの?」


試験開始までまだ時間はあったし、好奇心からそう訊ねていた。


すると男子生徒は顔をあげて「この中に子猫がいるんだ」と言って来たのだ。


その日はとても寒くて、雪がちらついていたのを覚えている。


こんな日に溝の中にいたら凍死してしまうかもしれない。


そう思って溝の中を確認してみると、男子生徒が言っていた通り子猫がいた。


子猫の真上には溝蓋が置かれていて、手を伸ばして届くかどうかの範囲にいる。


震えながらうずくまっている子猫を見るとほっとけなかった。


「どうにかして助けられないかと思って」


「ちょっと待ってて」


あたしはそう言うと鞄からクッキーを取り出した。
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