おじさんは予防線にはなりません
第8章 ピアス
「おみやげ、です」

「おう、気を遣わせて悪いな」

池松さんの、眼鏡の下の目尻が下がる。
その笑顔に。

……私は、複雑な思いだった。

「どうだった、旅行は」

「楽しかった、です」

あれから、大河とは微妙な空気のままだ。
いや、世理さんに会って、ますます微妙になった気がする。

「宗正はちゃんとしてくれたか」

「……はい」

「……なんか、あったのか?」

さっきから反応がおかしいと気づいたのか、眉をひそめて池松さんが私の顔をのぞき込んだ。

「その。
……奥さんに、会いまし、た」
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