現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
新天地
「善は急げ」の言葉通り、二日後の早朝にはグレースはヴェネディクトと二人馬車で出発していた。二人が住む王都のタウンハウスから半日かけてグランサム公爵領に向かうのだ。

「てっきり図書室はタウンハウスにお持ちなのだと思ったわ」

すぐに取りに行ける距離だと思ったから荷物が少ない。衣類などに多少の不安を持ったグレースが口を尖らせて訴えるとヴェネディクトは困ったように笑った。

「ごめん、グレースが分かってると思ってきちんと伝えなかった僕が悪かったよ。でもね、いくらグランサム公爵家といえどタウンハウスでは大きさに限界があるからね。大掛かりな図書室を持つなら領地にあるカントリーハウスが一般的なんだ」

「そうなのね。私も確認しなくて……ごめんなさい」

そんなあっさり謝られるとグレースに罪悪感がわいてしまう。元々八つ当たりのような文句なのだ。
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