耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

低い声で何かを呟いた怜は、スッと立ち上がると素早くテーブルを回って美寧の隣に立った。
目を丸くして止まっている美寧の椅子をスッと引くと、軽々と彼女の体を抱き上げる。

「きゃあっ!」

美寧の悲鳴すらこともなげに聞き流し、子どもを運ぶように軽々と美寧を抱えリビングのソファーのところまで歩いていった。

怜は美寧を抱いたままソファーに座る。その為美寧は怜の左ひざに腰かけた形になった。

「れっ、れいちゃん!?」

上擦った声で名前を呼ぶけれど、怜は応えない。
いつもは優しげに見つめてくれるその瞳は、濡れたように光っていてとても、美しい。怜の気配は糸をピンと張ったような空気すら漂っているのに、美寧はこれまで見たことないその輝きに、思考を止めて魅入っていた。

美寧の頬に怜の右手が添えられる。その感触に、美寧はハッと我に返った。

「余裕ですね。」

蠱惑的な瞳を細めて怜が微笑む。
怜が言っている意味がよく分からずに、美寧は黙って小首を傾げる。頬に添えられた手のぬくもりが心地良くて、美寧はうっとりと瞳を閉じ、その手に頬をすり寄せた。怜の手がピクリと小さく跳ねたような気がする。

「っ…ミネ…貴女ってひとは……」

苦いものでも噛んだような声に、瞳を開けると、すぐ目前に怜の顔があった。

「まったく無自覚に煽ってくれる……。男に“大人扱い”を求めたらどういうことになるのか、君は覚えた方がいい。」

「どういうこと?」と問おうとした美寧の唇は、一瞬にして温かなもので塞がれた。





【第一話  了】   第二話に続く。


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