身ごもり政略結婚
命の重みと試練
それから一時間。
後片付けを済ませた私は、千歳に向かった。

今までは自分がいないときは春川さんに頼るしかなく、簡単には休みも取れなかったし、一日フル活動だった。

でも、大雅さんのおかげで平日はパートさんをもうひとり雇うことができて、私にも少し余裕ができている。


「おはようございます」


調理場に顔を出すと、春川さんが朝生(あさなま)というその日に売り切らなければならない足の早い商品づくりをしていた。

大福や団子がこれにあたる。

立ち上る蒸気とともに漂ってくるほんのり甘い餡の香りが大好きなのに、今日はどうしてか胸焼けがする。


「結衣さん、おはよう。あれっ、体調悪い?」


きびきびと働いている春川さんが、顔をしかめた私に気づいた。


「ううん。なんだろ、食べすぎかな? あはは」


そんなふうに返したものの、食べすぎた心当たりはない。


「お父さんは?」
「長谷(はせ)さんのところにお使いだよ。すぐに戻るかと」

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