新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
言われて、脳内に浴衣を着た皐月くんと私が手をつないではにかんでいる姿がほわわんと浮かぶ。

……いいなあ、それ。

自然に考えたのはそんな感想で。無意識に口もとを緩めてしまってから、ハッと気づいた。



「いや、いやいや。花火大会の日って、普通に仕事じゃないですか」



来週この付近である花火大会の日付といえば、8月24日。

その日は土曜なので、Cafe fluffyは通常営業日だ。



「それなんだけどねぇ~。うち、お盆休みないでしょ? だからせめて24日を臨時休業にして、2連休にしよっかなって」



古都音さんがシャープペンシルのてっぺんを顎先につけながら、あっさり答える。

まさに今日は、8月13日。一般的な会社員や公務員は、長期休暇真っ只中だろう。

だがしかし、ここはその“一般的”から外れる飲食店。

ついでに言えば金融機関にもお盆休みはなくカレンダー通りの営業をしているので、皐月くんも今日は普通に出勤である。

古都音さんは一応「お盆休みたい?」と訊いてくれていて、それに対して私は「どうせ旦那さんも仕事なので大丈夫です」と答えていた。

けれども彼女は、きっと気にかけてくれていたのだろう。

皐月くんはお盆期間の休みはない代わり、7~9月のどこかで4日間夏休みを取得することができる。

彼の夏休みの日程が決まったら、その日に合わせて休んで構わないとも言ってもらっているのに……それとは別で皐月くんと同じ土曜日に休暇を取れるというのは、思いがけずうれしい提案だった。
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