part-time lover


お互い身支度を整えて、部屋を出る前に紙幣を渡される。

「今日も楽しかった。ありがとう。また会おうね」

対価の重さを感じつつも、前回と異なり次の約束をほのめかされて、なんとも言えない安心感が生まれた。

「はい。またお仕事が早く終わる日にでも声かけてください」

靴を履いてから一度だけキスをして、ドアを開いた。


涼しい夜風に包まれて、他愛のない会話をしながら駅へと向かった。


「じゃあまた」

「はい、お気をつけて」


スクランブル交差点を渡ったところで、ごく簡単な挨拶をして彼と別れた。

これから街に繰り出すうかれた人たちを横目にして、改札へ向かう足取りは自然と軽くなる。

ものの2時間弱の密会で、仕事の疲れもすっかり忘れているんだから我ながら単純だ。

心地よい気だるさを覚えながら、人の多い電車に揺られて家へと向かった。
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