偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
偽りの恋人はじめます

「さすがは高級料亭ですね。とても美味しかったです。特にこのとらふぐの唐揚げ。うちの場合はとらふぐって言うわけにはいかないけれど、魚料理のメニューの参考になりそう」

「ああ、そうだな」

 逢坂社長の軽やかな声に顔を上げる。すると社長の呆れたような、それでいてどこか柔らかい眼差しにハッと気づく。

 私ったら、こんな席で仕事の話なんかして。恥ずかしい……。

 仕事柄、美味しい物を口にすると、つい脳内が仕事モードになってしまう。私の悪い癖だ。

「すみませんでした」

 バツが悪くなってうつむき加減になると、肩を落とした。

「何を謝ってるんだ?」

「何って……。社長が相手でも今日は一応お見合いですし、そんなときに仕事のことを考えてるなんて非常識だと思いまして」

 いや、相手が逢坂社長だから、つい気を許してしまっというか。緊張感が薄まって、素の自分になってしまったと言うべきか。

 とにかく、場違いなことを言ってしまった自分に反省の意を込めて謝ってるんです。




< 57 / 195 >

この作品をシェア

pagetop