破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

🥚優しいおじやと令嬢の誘惑

冷たい空に月が昇り、屋敷で働く者たちも仕事を終えて、家族も寝静まった頃。


「……ザック、大丈夫かな」


寝巻き姿のアーシェリアスは、ベッドの上でクッションを抱き締めながらそわそわしていた。

ザックを連れ屋敷に戻ってすぐのこと。

容態をかかりつけ医に診てもらった際、過労が原因だろうからゆっくり休めば回復すると言われてはいる。

けれど、何度か様子を見に行ったけれど目覚める気配がないのでアーシェリアスは心配で眠れないのだ。

シーゾーは兄がプレゼントしてくれた専用のミニベッドですやすやと眠っている。


(よし、寝る前にもう一度だけ訪ねてみよう)


決めると、アーシェリアスは手にランプを持った。

父や兄に見つかったら叱られるので、そっとドアを開け、ヒンヤリとした廊下に誰もいないのを確認してから客室を目指す。

ロウソクの灯りが照らす静まりかえった廊下を歩くと、やがてザックが眠る部屋の前にたどり着いた。

遠慮がちにノックをするも返事はなく、それはザックがまだ目覚めていないことを示している。

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