天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース

親友 東坂一颯(とうさかいぶき)

「泰介」
キョロキョロと辺りを見回す俺に、一颯(いぶき)が手を上げた。


「お疲れ」
「ああ、お疲れ」
すべに空になった水割りのグラスを持ち、ニヤニヤと俺を見ている。

「ビール」
「俺はおかわり」
「かしこまりました」

最近よく利用しているホテルのバー。
駅からも近いし、待ち合わせにも都合が良くてほぼ常連化している。

「それで、どうなんだよ」
「何が」
わかっていて聞き返してみた。

すでに何倍かの水割りを飲んでいるだろうに、しらふのような顔。
名前を東坂一颯(とうさかいぶき)という。
高校時代からの腐れ縁で、大学時代一緒に起業した仲間。
俺のことを母親よりもよく知る人間だ。
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