天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
SIDE 泰介

元カノ 川野夏輝(かわのなつき)

夏の終わり。

仕事も順調で、俺の忙しさに変わりはない。
もちろん、交際も続いている。
お互いに遠慮もなくなり、彼女の子供っぽさとわがままが目につくときもあるけれど、そこもまたかわいいと思える。
そんな中、変化したことといえば・・・呼び方かな。
彼女は「泰介さん」から「泰介」になり、俺は「爽子さん」から「爽子」と呼ぶようになった。

「あれ?今日はゆっくりだな」

ちょうど終業時刻。
ノックもせずに入ってきた一颯が、不思議そうな顔をしている。

確かに、今日は週末の金曜日。
いつもならさっさと仕事を切り上げて、爽子に会いに行くはず。
しかし、
「今日は彼女が仕事で遅いんだ」
夏休みのイベントでこの時期のホテルは大忙しらしい。

「ふーん。じゃあ、飲みに行くか?」
「いや、やめておく」
「そうか。まあ、たまには家でゆっくりしろ」
「ああ」


急ぎの仕事を片付けると、俺はオフィスを後にした。
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