天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
懐かしそうに、泰介さんはナツキさんを思い出している。

その表情から、ただの友達でなかったのは予想できる。
きっと、付き合っていたんだと思う。

チクン。
私の胸が痛んだ。

この痛みは、ナツキさんへの嫉妬。
そして、
隠すことなくナツキさんの事を話してくれた泰介さんに対する罪悪感。
だって、私は過去のことを話せないから。

「怒った?」
「いいえ」
私に怒る資格はない。

「日曜日、爽子さんのピアノを聞きに行くよ」
「はい」

泰介さんは気づいているんだろうか?
私にことは『爽子さん』なのに、ナツキさんの事は『ナツキ』『あいつ』って呼んでいることを。

「どうしたの?」
黙り込んでしまった私を泰介さんが心配している。

「どうもしません」

「ナツキと最後に会ったのは2年前。それまでも何度か会っていたんだけれどね。あいつも有名になったし、きっと忙しいんだよ。俺にとってもナツキにとっても、今は大学時代の友人ってだけの関係だ」
必死に言い訳をする泰介さん。

「本当に?」
「ああ」

隠し事をしている私としては、これ以上は何も言えない。
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