クールな弁護士の一途な熱情



そんなことを考えながら、私はトイレへ行こうと部屋を出る。

そしてドアを開けようとした、その時。中から女性社員の声が聞こえた。



「さっき見たけど、入江さんさっそく異動先でも上司に取り入ってたよ」



それは、聞き覚えのある声……以前までいたブランドで一緒に働いていた後輩社員たちの声だった。



「散々休んでいきなり異動希望出して、いいご身分だよねぇ」

「復職したのもあの子が産休入ったからだよね。上原さんもあれ以上噂たてられたくないから必死で入江さんの異動先探してさぁ」



あぁ、言われてるなぁ……。

当然私の行いを気に入らない人もいるだろう。事実も嘘も、噂として回っていく中でそんな言葉を聞くことも時折ある、けど。


私は息をひとつ吸い込んで、ドアを開けた。



「ごめんね、長いこと休んでいきなり異動しちゃって」

「えっ!あっ入江さん!?」



突然姿を現した私に、彼女たちはぎょっと驚いてから、まずいといったように焦り出す。

それに対しても私はにこりと笑って言う。



「ブランドは変わったけど、いつでもなんでも聞いてね。相談のるから」



その言葉に彼女たちは、ひきつった笑顔で頷いた。



きっと、以前の自分なら潰れてしまっていた。

だけど今の私は、どんな噂も笑って流せるくらいには強くなった。



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