愛され女子になりたくて
変調の兆し

全ての料理を食べあげて、デザートをどうしようかと話してたら、祥子ちゃんのスマホに着信が入った。

「ユタ兄、どしたの?」

どうやら祥子ちゃんの従兄、温(ゆたか)さんらしい。
お互い一人っ子で、近くに住んでるから兄妹の様に育ったって言ってた。

「ユタ兄のお迎えだ。カナも送って貰いな」

「この前も送って貰ったし、今日はそんに遅くないから大丈夫だよ」

相変わらず、仲が良い。

「だぁめ、ユタ兄が心配するから。カナに何かあったら、ホノ姉だって悲しむよ」

「・・・私は大丈夫だよぉ。祥子ちゃんは、絶対何か有るとは思うけど。私に限ってナイナイ」

「何揉めてんの?」

「ホノ姉!」

「こっちはお開きになったから、花菜美一緒に帰ろ!」

「ホノ姉も一緒に送って貰うよ?」

「温さんに悪いよ。お姉ちゃんと二人だし大丈夫だよ」

「安井さん、俺がコイツら送って行くから。大丈夫だ」

青山さんが、姉の後ろから現れた。

「ん、了解しました。ちゃんと送って行って下さいね!」

祥子ちゃんが納得したところで、会計して店の外に出る。

店先には、温さんが黒のミニバンを止めて待っていた。

「お疲れ様。あれ、カナちゃんはいいの?」

「温さん済みません。今日は姉と上司に送って貰いますので、大丈夫です」

「そうか、気をつけて帰ってね。祥子がいつも振り回して悪いね。何かあったら、何時でも連絡して貰って構わないから」

「はい。ありがとうございます。おやすみなさい。祥子ちゃん、またね」

「はい、はーい。カナもホノ姉もまたね~」

温さんが来て安心したのか、かなり酔いが廻ったようだ。
陽気に手を振ると、帰って行った。

「今のは安井さんの彼氏?」

青山さんは、知らないんだっけ。

「祥子ちゃんの従兄です。ちょっと過保護気味ですが」

「安井さんのガードの硬さは、あの人だな。なるほど、鉄壁だな」

妙に感心してる。

「じゃ、俺たちも帰ろう」

青山さんも同じ路線で、私達と同じ駅から通ってる。
三人で電車に乗り込むと、青山さんと姉が同期の話をしているので、少し気詰まりな感じがした。

車窓を流れて行く夜景を見て、ボッーとしてしまう。
青山さんは姉と話をしながら、こっちを見てる。
車窓に映る青山さんの視線に気付くと、私は目を伏せた。


< 11 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop