15年目の小さな試練
弟の代理
弟の叶太がインフルエンザに罹患して家に戻って来た翌日、月曜日の朝。
俺は同じ家にいながら、またしても叶太と電話で話をしていた。いや、話をすると言うか、叶太が話すのを聞いていた。
まだ熱が下がらないらしく、おでこにはジェルのシートが貼られている。ビデオがオンになっているから表情まで分かる。顔色はイマイチだが、高熱が丸一日以上下がらない割には元気そうだ。
「兄貴、聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる」
苦笑しながら、相づちを打つ。
ホント、叶太は過保護だ。まあ、気持ちは分からないでもないけど。ハルちゃんは本当に身体弱いし。
だけどやっぱり、叶太のこれは行き過ぎじゃなかろうか。過保護とか心配性を通り越してる気がする。
……溺愛? ちょっと違うか。
「ハルは大学生になってから、軽く化粧をするようになって、顔色が分かりにくくなったから、気をつけてあげてね?
あ、もちろんオレは分かるんだけどね? やっぱシンドイと表情が違うし、ハル、そんな濃い化粧してないし」
叶太は最愛の妻、ハルちゃんのことを俺に頼むとしきりに言う。
俺にしても、ハルちゃんは可愛い義妹だ。
義理の妹以前に、隣に住む(住んでいた)親友がそれこそ溺愛している妹で、ハルちゃん一家が隣に越してきて以来、十年以上のつきあいだ。叶太と結婚していなかったとしても、俺にとっても実の妹同然の女の子でもある。
気にかけてやってくれと言われるなら、もちろんそうするし、何かあったら助けるのだって当たり前だ。
と思っているのに、叶太はひたすらハルちゃんの事を頼み続ける。
俺は同じ家にいながら、またしても叶太と電話で話をしていた。いや、話をすると言うか、叶太が話すのを聞いていた。
まだ熱が下がらないらしく、おでこにはジェルのシートが貼られている。ビデオがオンになっているから表情まで分かる。顔色はイマイチだが、高熱が丸一日以上下がらない割には元気そうだ。
「兄貴、聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる」
苦笑しながら、相づちを打つ。
ホント、叶太は過保護だ。まあ、気持ちは分からないでもないけど。ハルちゃんは本当に身体弱いし。
だけどやっぱり、叶太のこれは行き過ぎじゃなかろうか。過保護とか心配性を通り越してる気がする。
……溺愛? ちょっと違うか。
「ハルは大学生になってから、軽く化粧をするようになって、顔色が分かりにくくなったから、気をつけてあげてね?
あ、もちろんオレは分かるんだけどね? やっぱシンドイと表情が違うし、ハル、そんな濃い化粧してないし」
叶太は最愛の妻、ハルちゃんのことを俺に頼むとしきりに言う。
俺にしても、ハルちゃんは可愛い義妹だ。
義理の妹以前に、隣に住む(住んでいた)親友がそれこそ溺愛している妹で、ハルちゃん一家が隣に越してきて以来、十年以上のつきあいだ。叶太と結婚していなかったとしても、俺にとっても実の妹同然の女の子でもある。
気にかけてやってくれと言われるなら、もちろんそうするし、何かあったら助けるのだって当たり前だ。
と思っているのに、叶太はひたすらハルちゃんの事を頼み続ける。