心、理、初
3人でのデート
○カフェ心貴呂の前(朝)
心「お待たせ」
心はカフェ心貴呂の玄関から出てくる。
理也「遅い。十時集合なのに、もう十分も過ぎてるぞ」
カフェ心貴呂の前で待っていた理也が怒っている。
初「十分ぐらい良いじゃない」
理也の隣に居る初がなだめる。
理也「新谷が十時集合って言ったんだぞ。言った本人が遅刻するのはおかしいだろう」
初「女性は身支度に時間がかかるんだよ」
理也は心を上から下まで見る。
理也「どこにそんな時間かけてるんだ?」
初「理也…」
心「初くん、もう良いよ。辺寺は私がキスしたから、機嫌が悪いだけだから」
理也「違…」
心「キスしてごめん。
もうしないから、機嫌直して」
理也は何も言わず、一人で歩き出す。
初「理也!」
初が理也の後を追いかける。
心「もうしないって言ってるのに……。変なやつ……」
心は理也と初を追いかける。

○街中(朝)
初「本当に私達は休んで良いのかな?」
心「良いの。お父さんがそう言ってたでしょ?」

○(回想)二階のリビング(夜)
心の父「お客様は確実に減るだろう。だから、お客様を増やすために明日は店を休んで、私は新しいメニューを考えようと思う。
心達はどこか遊びに行きなさい」
心「分かった」
(回想終了)

○街中(朝)
心「一人の方が考えやすいって言うし」
初「でも…」
心「初くん。今は店の事は考えないで。辺寺の事だけ考えて。ね?」
初「…分かった……」
初が初の左隣に歩く理也を見る。
心はその様子を嬉しく見ると、ふと周りに居るカップルが目に入り、どのカップルも手を繋いでいる事に気づく。

○映画館のロビー(朝)
心「飲み物は買って良いけど、食べ物は買わないで」
理也「何でそんな事新谷が決めんだよ」
心「お願い」
心は理也を見つめる。
初「別に良いじゃない。心ちゃんがチケット代払ってくれてるんだし」
理也「なら…チケット代払う……」
心「食べ物なら、映画を見終わった後に私がおごるから、お願い」
初「理也……」
理也「分かったよ……」
心「ありがとう!」
心が笑顔になる。
心を見つめる理也。
初「じゃあ…飲み物を買いに行きますか」
心「私は飲まないから。二人で買いに行ってきて」
理也「飲まないのか?」
心「うん。私、映画を見る時は、食べたり、飲んだりしないんだ」
理也「そうか……」
初「分かった。じゃあ、二人で飲み物買ってくるね。行こう、理也」
理也「ああ……」
初と理也が飲み物を買いに行く。
心(これで、よし)

○劇場四番(朝)
心、理也、初は一番後ろの席の列でチケットに書かれている番号の席を探している。
初「ここの席だね」
初くんがその席に座ろうとする。
心「ちょっと、待って。私がその席に座る」
理也「何で?」
心「初くん、良いかな?」
初「良いよ」
理也「初」
心「ありがとう。初くん」
心が初の席に座る。
理也「立て! 自分の席に座れ!」
理也が大きな声を出す。
初「理也。どうしたの?」
理也「早く立て!!」
心「ごめん。初くんと離れさせちゃって……。でも、こうしないと出来ないんだ……」
理也「新谷…何をするつもりだ?」
初「理也。もうそろそろで映画が始まる。座ろう」
理也「でも…」
心が理也の上着の裾を掴む。
心「座って……」
初「理也」
理也「分かったよ。手を離せ」
心は掴んでいた手を離す。
初は心の左隣、理也は心の右隣の席にそれぞれ座る。
心「初くん。飲み物は左側に置いて」
初「分かった……」
初は右手に持っていた飲み物のカップを左側のカップを置く所に置く。
心「初くん、右手出して」
初「右手? はい…」
初が心に向かって右手を出すと、心は初の右手を右手で掴む。
理也「新谷、何して…って…おい!」
心は理也の左手を右手で勝手に掴む。
理也「離せ…」
心「動かないで!」
心は初の右手を下に、理也の左手を上に重ねると、心が両手でそれを隠すように包む。
初「心ちゃん…」
心「心配しなくても大丈夫。一番後ろの席だし、映画が始まれば、暗くなって気づかれないから。安心して」
理也は何も言わず、心を見つめている。
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