可愛い女性の作られ方
六.結婚――一緒にいることを誓います
年が明けて。
相変わらずの日々を送っていた。
加久田は月曜日はうちから出勤して、自分の家に帰る。
そして金曜日にうちに来て、また月曜日は……の繰り返し。

すぐに散らかってしまう私の部屋は、加久田がこまめに片付けてくれるおかげでいつもきれい。
片付けてもらう代わりじゃないけど、私は加久田にごはんを作る。
加久田はいつも喜んで食べてくれるから、こっちも作り甲斐がある。

一緒に晩ごはんを食べて、お風呂に入って。
それから借りてきたDVDなんか見ながら、まったりふたりで晩酌。
それから……いつものパターン。
私の身体は、完全に加久田にふれられる喜びを覚え込んでいるから、気持ちよくて仕方ない。
毎回途中で溺れてしまわないように、必死でしがみついている。
加久田はそんな私が可愛いと、毎回いってくれる。


「優里はいつになったらベッドの外でも、名前で呼んでくれるようになるんですか?」

「えっ。
……だって、なんか恥ずかしい」
 
ベッドの中で、突然そう聞かれた。

……そうなのだ。

いまだに私は、加久田のこと、その、あれしているとき以外は名前で呼べずにいた。
別に、いままで付き合ってきた男性は名前で呼んでいたし、難しいことではないと思うんだけど……何故か、妙に恥ずかしい。

「ちょっと練習してみましょうか?
はい、たかひろ」

「……た、……たか、……たかひろ」

「もー、優里はなんでこんなに可愛いんですか?
男と付き合うの、初めてじゃないでしょう?」
 
真っ赤になってしまった私を、加久田は目を細めてみている。

「……だって、こんなに女扱いされたの、初めてだから……」
 
うん。そうだ。
小さいときからさばさばした性格が災いして、みんな私のこと、男の子のように見ていた。
結構平気で蛙とったり、虫捕まえたりしていたし。
遊んでいる相手も、男の子が多かった。
両親も、私は生まれてくる性別を間違った、って笑っていた。

でもほんとは、確かにそういうことも好きだったけど、同じくらい、お人形遊びとか、ふりふりのレースとか、ピンクのリボンとかも好きだった。

だけど、私がそういったことに興味を示すと、みんな意外そうな顔をした。
中学に入ると、女子の中では背が高いのもあって、尚更似合わない、とかいわれるようになった。
次第に、みんなが私に男でいることを期待している気がして、そう、振る舞うようになった。
男と付き合うようになっても、女らしい一面を見せると変な顔されたし、なのに「男とは付き合えない」と振られていた。

だから、女として扱ってくれるのは加久田が初めてで……なんかいままでと勝手が違って困っている。

「なんでみんな、優里が男だって思うんでしょうね?
誰よりも女らしいのに」

「んー、いままではわからないけど。
いまは男並みに仕事してるからかも」

「確かに、仕事中の優里はかっこいいですけどね」
 
……チュッと軽くキスされた。
なんだか、幸せな時間。
こんな幸せな時間が、私に持てるなんて思っていなかった。
加久田に感謝だ。
 

三月になって、私は課長に呼び出された。

「相談があるのだが」

「はい」
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