クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する

出会い

和生は、これまで仕事人間で、これといって執着する物も事柄も人もなく暮らしてきた。

イケメン御曹司とはいわれていても、所詮は叔父の会社の跡継ぎ候補に過ぎない。

和生の父は次男であり、自由な職業選択を許された、゛農家を営む妻の実家でマスオさん状態の公立高校数学教師゛

さして面白味もない人物だ。

樫原家の長男であり、若くしてホテル業を開業したのがオークフィールドホテルの現社長で和生の叔父である樫原政孝(65)

彼は今でも独身で子供もいない。

そんな中、還暦を過ぎたころに過労で倒れ、数年前から後継者問題が勃発して、思わぬとばっちりを受けたのが和生である・・・。


゛血が繋がっている親戚は和生しかいないんだ゛

それだけで、進路を決めかねていた大学生時代、勝手に周囲は和生に過大な期待をかけ、

和生は迷いながらも、しぶしぶそれに応えるうちにここまできてしまったのだ。

当の和生は別に野心があるわけではなかった。

幼稚園時代、クラスの担任の先生を理論で言い負かして泣かせた。

小学校時代、同級生や上級生が子供っぽいいじめをしたり、からかったりするのを鼻で笑ってクラスから浮いてしまった。

中学、高校時代は、成績は常に5番以内をキープ。

コンピューター部に所属し、顧問の先生から、ハッキングの仕方やプログラミングのスキルを学んだ。

大学でも情報処理ビジネスを専攻し、将来はそちらの道に進もうと考えていた矢先に、叔父が過労で倒れてしまい、降って湧いた跡継ぎ問題に巻き込まれ、ホテルに就職してしまった。

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