雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
1章 私が専属秘書に……?
〇町の小さなパン屋さん・工場(昼)

30歳くらいのコック帽をかぶった男性(以下・父)が、小学生くらいの女の子(以下・陽和)と一緒にパンを作っている。

父「いいか、陽和。パンには作り手の愛情がこもっているんだ」
陽和「愛情?」
父「そうだ、おいしく食べて欲しいという愛情だ」
陽和「そっか! だからお父さんのパンは美味しいんだね」
父「はは、そうだな」
陽和「私もお父さんみたいな職人になりたい」
父「なれるよ、きっと陽和なら」


~~~13年後

〇街中(朝)

背の高いビルが立ち並ぶオフィス街。
スーツ姿のビジネスマンやOLが信号待ちをしている。
そこにリクルートスーツを着た主人公(陽和)がスマホを耳に当てながら現れる。

陽和「~~どうした? うん、今駅に着いたところ。え、そうなの? うーん。ごめん、もうすぐ着くところだから。帰ったら聞くよ」

信号待ちをしている人たちを横目に、脇道(細い道)へ逸れる陽和。
そこに1台の車が猛スピードで突っ込んでくる。

――キキィ

現場に居合わせた男性「危ない!」

驚いた陽和は思わず地面に尻もちをつく。
荷物が散らばり、スマホが滑っていく。
車の運転席から60代後半くらいの男性(以下・榊)が降りてきた。
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