My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

「え!?  あ、そ、そうなんです。何でか自分でもわからないんだけど……あははは」
「ライゼ様、それが真実だとしてなぜこの地へ……!?」

 ブライト君は空笑いする私からさっさと視線を外し、困惑するようにライゼちゃんに訊いた。

「カノンさんに歌っていただくためです」
「歌って……って、しかし銀のセイレーンの歌は破滅を導くと……!」
「心配ありません。その伝説は偽りです。カノンさんの歌は、人を救うものだと私は確信しています」

 その迷いの無いまっすぐな言葉にブライト君は一瞬言葉を無くしたようだった。

「では、他のお二人は……」
「私はセリーン。傭兵だ。護衛としてカノンと行動を共にしている」

 素早く自己紹介をしたセリーンにブライト君は戸惑い気味に一礼した。
 そしてその視線がラグの方へと移る。

「あの方は……」
「魔導術士のラグさんです」
「ま……!?」

 ライゼちゃんの小さな、でもはっきりとした声にブライト君の目が驚愕に見開かれた。
 私が銀のセイレーンだと聞いたときよりもずっと、その反応は大きい。
 ――胸がざわついた。

「な、なぜ魔導術士などをここに!? ライゼ様、御気は確かですか!?」

 その声は完全に裏返っていた。
 昨夜のラグの言葉が蘇る。
 彼は、まるでこちらの話を聞いていないかのように目を閉じていた。
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