My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1



「カノン」

 セリーンの声にゆっくりと重い瞼を開ける。

「あ……れ? 私、寝ちゃった?」

 浅い眠りだったからか、身体が酷くだるい。

「平気か? 歌は術と同じで力を消耗するものなのだろう?」
「あ、うん」

 このことはラグにしか言っていなかったことだけれど、セリーンにも気づかれてしまったみたいだ。

「でももう平気だよ」
「そうか」

 笑顔で言うとセリーンは安心したように微笑んだ。

「なら美味い料理が冷めてしまわないうちに夕飯にしよう」
「うん! ……あ、ねぇラグは? セリーンあれから会った?」
「あぁ、あの男ならずっと向こうの家だ。戻ったらグースカ寝ていたとラウトが言っていた」

 やっぱり、と小さく溜息を吐いて立ち上がる。

「……流石にあの場にはいられなかった、か」
「え?」

 その独り言にも取れる小さな呟きに、私は彼女の長身を見上げた。

「あの子供達を見ていられなかったのだろう。……まぁ、あの男がまだ正常な感情を持ち合わせていたらの話だが」
「……どういうこと?」
「戦争に負け、あの子達の今がある」

 ドクン……と、また嫌な音が聞こえた気がした。
 酷くやせ細り、ぼろぼろの服を纏った子供達。
 ――戦争中、ラグ達魔導術士とこのフェルクの人達は敵同士だった。
 その結果、あの子たちの“今”がある。
 セリーンの言っている事はそういうことだろう。
 私は思い切って彼女に訊く。

「ねぇ、セリーン。魔導術士って、戦争中そんなに酷いことしたの?」

 私の目をじっと見つめるセリーン。

「……カノンは異世界から来たのだったな」
「え? う、うん。そう」
「その世界に、争いはあるか?」
「え?」
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