My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
13.内緒の友達
「わかったな。あの神導術士にもそう伝えとけよ」
言いながらさっさと背を向け行こうとするラグを私は慌てて呼び止める。
「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
反論を予想していたのだろう、ラグが面倒くさそうに足を止め振り返った。
「なんだよ」
「もう出るって、だってまだ昨日来たばっかりだよ!?」
「喜んでもらえたんだろ。だったらそれでいいじゃねぇか。ここで帰っても誰も文句は言わねーよ」
「で、でも、まだ……」
そう。まだこの国に来た目的――ライゼちゃんの願いを叶えてあげていない。
フェルクレールトの皆を助けて欲しいという、彼女の切な願い。
「お前は、本気でこの国を救えると思っているのか?」
「え?」
ラグの冷たい視線にどきりとする。
暑さとは別の嫌な汗が額に滲む。
「今日ガキの前で歌って、で? 次は大人の前で歌うつもりか」
「う、うん。……多分、ライゼちゃんはそのつもりだと、思う」
ゆっくり視線を外しながら、私は答える。
するとラグはいつものように深く溜息を吐いた。
「やめとけ。無理に決まってる」
あっさりと否定されムっとする。
「なんで? 子供も大人も一緒でしょ? ラグは見てなかったから知らないかもしれないけど、今日来た子達みんなすっごく楽しそうだったんだよ!?」
思わず大きな声が出てしまっていた。
周囲の虫たちの大合唱がその瞬間ピタリと止んで、すぐにまた再開される。
手の上ではブゥが不安そうに私たちを見上げていた。