私の心と夏の花火
日曜日の夏祭り。
彼は一応、デートに誘ってくれた。
浴衣を準備して、着付けも確認して。
準備は万端……だったんだけど。

――ブブブブッ。

しっかり浴衣を着て家を出る直前。
バッグの中で震えた携帯に、嫌な予感がしながら取り出す。

「はい」

『香月(こうづき)?』

電話の相手は予想に反して上司の大竹(おおたけ)課長だった。
彼からまた、ドタキャンの連絡かと思ったのに。

「はい。
なんでしょうか?」

『悪い、取引先でトラブル発生。
出てこられるか?』

私は課長の補佐をしているので、こういう電話は別に不思議じゃない。

……でも。

さすがにいまはないだろう。

「あのー、えっと、ですね」

『香月だけが頼みなんだ』

ううっ。
他の人なら断るが。
尊敬している課長からそんなこと言われたら断りづらい。

「……はい。
わかり、ました。
いまから準備して行きます」

『悪いな。
じゃ、待ってる』

「はい」

……はぁーっ。

携帯切ってため息。
突っ立ったままだった玄関から、履いたばかりの下駄を脱いで室内に戻る。
バッグをベッドに投げ、乱雑に浴衣を脱ぎ捨てた。
適当な服に着替えて、髪は面倒なので髪飾りを外しただけ。
浴衣用のバッグから中身をいつものバッグにつっこんで、家を出る。
駅に向かいながら彼氏のケイに電話した。

――プルルルル。

『はい。
なにかあったのか?』

ううっ、鋭い。

「行けなくなった」

『は?』

「だから、行けなくなった」

超不機嫌な自分の声。
だって、楽しみにしていたんだもん。

『なんで?』

「トラブル発生。
出てこいって上司が」

『は?
なにそれ?』

電話の向こうの声も超不機嫌。
そりゃ、ドタキャンされればそうなるよね。

「仕方ないでしょ。
私が行くしかないんだし」

『わけわかんない。
断りゃいいだろ、そんなの』
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