ただ愛されたいだけなのに

2.

 

   —わたしは子供? ワガママ?—


 わたしは二時間と十五分前にバイトを辞めた。何故だかわからない。いつかは辞めようと思っていたけれど、まさか今日辞めることになるとは思わなかった。それもたった一ヶ月で……。

 いつもどおり出勤して、うるさい子連れの親子の注文を聞いたりしながら業務をこなしていた。けれど午後六時を回った頃、事件は起きた。中年の男性客が、食事を終えて、ベルを鳴らした。そのテーブルは山端さんの担当だったから、わたしは他のテーブルの注文を聞いていたんだけど、ガラスが割れる音がして駆けつけなきゃならなくなった。お皿三枚が見事に床でバラバラになっていて、山端さんはオロオロしながら男性に謝っていた。


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