私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
第八章・船旅二日目

「ふああ~!」

 長いあくびが出てしまう。
 日が昇り、朝日が厳かに射し込んだ。

 私は朝日を恨めしいような気持ちで眺めた。一睡もしていない身体に、太陽の光は何故かうっとうしかった。

 あれから、私はずっと起きていた。
 何度か寝落ちしそうになったけど、ほっぺたの内側を噛んでみたり、腕をつねったりして、何とか眠気を覚ました。

 風間さんは数度起きた。
 その度にえずいたけど、吐くまでには至らなかった。
 私はちょっとだけ安堵し、起きる度に少しずつ少しずつ、お水を飲んでもらった。

(なんとか吐き気が治まる方法が、あればいいんだけど)
 私は風間さんの寝顔を見つめながら、密かにため息をつく。

 これじゃ、彼の胃も体力も大変だ。本当に薬はないんだろうか。まあ、あるならとっくに手に入れてるか。

「……トイレ行きたい」

 不意に、尿意に襲われた。私は風間さんを起こさないように、静かに、慎重に彼の頭をどかして、立ち上がる。

「うわっ」
(あああ、マジ痛い。痛いって言うか、痺れる。足が痺れる!)

 叫びそうになりながら、声を堪えてビリビリとした感覚を味わいながら、一歩一歩と足を踏み出した。
 腰が引けて、足が踏ん張り、変な格好になる。

 でも、幸い早朝。
 見ている人は誰もいない。――はず。

 何度か半コケ状態になりながら、進んだ。
 
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