身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
蜜夜と豹変
◇◆◇◆◇

 披露宴は式以上に緊張した。何せ二宮の会社関係、つまりは執行役員や取引先の重役など早々たる顔ぶれだと聞く。

 白一色の白無垢から赤に金糸を施した華やかな色打掛で入場した。閑に手を引かれて、琴音は会場内をゆっくりと進みながら各テーブルで礼をとる。笑ってはいるが、その状態で表情筋が固まってしまっている。震える琴音の指先を閑の手が励ますように時折強く握って、それが無ければ琴音はもっと緊張を顔に出してしまっていただろう。

 高砂席に着いた後も、進行の合間にぱらぱらと人が訪れ祝いの言葉をもらう。あらかじめ教えられた人物だけは何とか顔と名前が一致した。問題なく挨拶をこなしたつもりだが……上手く出来ただろうか、わからない。頭の中は真っ白だった。

 式進行の半分程のところで衣装替えの為に閑とふたりで中座する。会場の外に出て扉が閉まった瞬間に、無意識に大きく息を吐き出した。

「……琴音。笑顔が引きつってる」
「あっ……ごめんなさい、緊張がひどくて」
「はは。うん、わかってる」

 閑はずっと、式の間、席に着いてからも手を握ったり肩を撫でたりと琴音のどこかに触れていた。おそらく、緊張の解けない琴音を励まそうとしてくれたのだ。

「会社関係者だとか、気にしなくていい。今日は琴音が主役なんだから楽しんで」
「そんなわけにいかないよ」
「君が主役だ」

 念押しするようにそう言って、閑の手が琴音の頬に当てられた。こうされるのが好きだと琴音は思う。手のひらの温もりが心地よく、頬を摺り寄せてしまいそうになる。
 閑の顔を見上げると、彼の目がとても熱いような気がした。

「あの……」

 見つめ合っていると、その熱が移ったように琴音の頬も熱くなる。

 
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