敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】




私がピアノから離れて数ヶ月した頃、自宅を訪ねてきた人がいた。


「突然すみません。以前、綾さんと華さんが出場したコンクールで審査員をしていた、羽山貴明と申します」

「まあ、ピアノ講師の羽山先生ですね。存じております。今日はどうされましたか?」

母が対応した。

「綾さんのこと、伺いました。素晴らしい演奏家だったので、残念でなりません。綾さんは、その後どうされてますか?」

「今は看護師を目指して勉強を頑張ってるんですよ」

「そうでしたか。……妹の華さんは?今日は華さんのことで訪ねてきたのですが。華さんはご在宅ですか?」

「華ですか?華はまだ帰宅していないんです」

「そうですか……華さんのことでお母様にもお話をしたいんですが、よろしいですか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。よろしかったら上がってください」
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