距離感
ライバル
自分の気持ちを認めると。

一気に楽になった気がした。

頑なに拒否していた部分があったのだろうか。

気持ちに蓋をすれば、過去の惨事を振り返らなくてすむと思ったか。

それは、違った。

好きは止められないんだ。

相手を想う気持ちを止める薬なんてない。

正直に生きよう。

別に王子とどうなりたいっていう願望はない。

ただ、喋りたい。

王子の顔が見たい。

これ以上、欲を持っても仕方ないし。

「おはようございます」

10月に入ると、気温が一気に下がった。

ついこの間までは、蝉が鳴いていて。

35度以上の灼熱地獄の日々だったのに。

今朝になって気温が一気に下がって天気予報で、横浜市は最高気温23度と言っていた。

そのせいなのか、季節の変わり目なのか。

目を覚ますと、時計は8時を回っていて。

私は軽く悲鳴を上げた。

寝坊をしたのだ。

急いで身支度をして、会社に到着してタイムカードを打刻する際、時間を見たら。

8:59と表示されていて、心臓のバクバクが止まらなかった。

一人だけ、ゼーゼーと息を切らして。

朝礼で管理者の話を聴いている最中、斜め前の席が空席だということに気づいた。

(あれ?)

すぐさま、王子の席のほうに目をやると。

王子はあくびをしながら立っている。

朝礼が終わって、もう一度(かなめ)さんの席を見る。

また、寝坊かな。

最近、遅刻が多い要さんだ。

まあ、来たところで。居眠りするかお喋りしかしていないんだけど・・・。
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