揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
Case3 カメラマン〈上川 裕之〉
俺の名前は上川 裕之(カミカワヒロユキ)
37歳。
職業はカメラマン。
風景を専門にしてたけど、知り合いに頼まれてあるモデルの密着取材に同行してほしいと頼まれた。
あまり気が乗らなかったが、必要としてくれるなら違った方向からも勉強出来るかもと思い引き受ける。
動く被写体を撮るのは久しぶりだ。
しかも名の知れた有名な女性モデル。
何故俺が選ばれたのかと言うと、
彼女はもともと嫁の知り合いで仲も良かったから。
嫁も元モデルで結婚して7年。
子供も2人授かった。
「あなた、晴美のことお願いね」
とあの時もそう言われて普通にスタジオ入りしたところで。
そういや嫁との出逢いもこんな感じだったな。
「私、上川さんのファンなんです…!」
まだ無名だった頃の俺に出逢った瞬間言われて、出した写真集持って来て初めてサインねだられたから衝撃的だったの今でも鮮明に覚えてる。
もう人物はいいやって思ってたのにこうしてまた機会を与えられた。
俺の人生が大きく揺らぐなんてことはこの時まだ知る由もなかったんだ。
これは、カメラマン Rei がまだメイクアップアーティストだった頃の話。
当時、まだ30歳だった俺はそれなりに食えていけてるカメラマンの端くれで縁あって有名モデルの密着取材した時にヘアメイクとして現場に居たのが後にReiとなる美麗だった。
「初めまして、今回密着取材を担当しますカメラマンの上川です」
写真を撮るにあたってヘアメイクとも連携する部分がある為、名刺を渡し挨拶をしたのが出逢いだった。
第一印象はとにかく眼力がある子だな、という感じ。
「ヘアメイクの南城 美麗です。宜しくお願いします」
あまり笑わない子。
ちょっと取っ付きにくそう。