揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「わぁ、やっぱ美麗ちゃんにしてもらうと気分上がる〜!いつもありがとうね」と担当するモデルが言う。




「どうもでーす」と無表情な返しに一瞬笑いそうになった。
え、この子大丈夫なの!?って。
コミュニケーション取れるのかな……
この時、美麗は20歳だった。




「あの子若いのにしっかりしてるよ〜ちゃんと要望通りにしてくれるし、最近の流行り教えてくれるし〜」




モデルも結構信頼してるみたいだな。
「え〜?私には笑ってくれるよ〜?」ってマジか。
じゃあ…俺、嫌われてる?
ニコッともされたことねぇよ。




喫煙する為に外へ出た時のこと。
建物の裏に行こうと曲がったら目に入ってきた人影。
思わず立ち止まってしまった。
決して見てはいけない現場。
男が女を壁側に押し倒しキスしていた。




咄嗟に隠れる俺。
ヤバ、とにかく退散だ。
足音立てぬよう引き返そうとした。




「美麗ちゃん、俺と付き合ってよ」




男の声に動きが止まる。
え……?
美麗……ちゃん……!?
ってまさか………




「あぁ、ごめん。無理…」




確かに彼女の声だ。
この冷たい感じ……間違いない。




「え?それは……なんで、かな?今……キスしたよね?」




「それはあなたが無理やりしてきたんでしょう?」




「ち、違っ…!てか、抵抗しなかったじゃん……同意の上だろ」




「じゃあそういうことにしていいですよ?要件はそれだけですか?行きますね?」







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