彼女になれない彼女
不思議な別れ話
私がご飯を食べ終わってテレビを見ていたタイミングで平良は店に入ってきた。

いつもと違う顔だ。

そりゃそうだ、明日は強豪校と当たるし、平良もプレッシャーだよな。

私はなんでもないフリをしてテレビに目をやる。

「沙和。」

平良の方から声をかけてきた。

「ん?」
「昨日はごめん。」

目の前で頭をペコッと下げる。

「へ?」
「なんか失礼だったかなと思って。」
「ああ、うん。」
「あのさ」

平良が私の目を見つめてくる。
なんか、こわい。

「別れたかったら言って。」

へ?
頭が真っ白になる。
またそんなこと言う。

「だって俺ら、ただ宿題やっただけで付き合ってるだけだし、もう矢野さんには断ったから、俺は大丈夫。」

頭から血がサーッとひいていく気がした。
そんなの、あんまりだ。
やっと付き合えたのに。

私の口から言葉が出ない。
私は別れるなんて嫌だ。

平良がまた口を開いた。

「勉強とか部活にも集中したいし、沙和とギクシャクするのも嫌なんだよね。」

そっか、私が悪かったんだ。
平良がそんなこと思うなんて、私が悪かったんだ。

「そうだよね、明日大事な試合だもんね。」
「うん、だから今日はスッキリしたくて。」

この3週間、何にもできなかった。
私、せっかく彼女だったのに、嘘ついてばかりで何もできなかった。
矢野さんを断わったら、本当に私は用無しだったんだ。

でも・・・私はやっぱり別れたくない。

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