My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3

2.盗賊とモンスター


「どこで聞いた!?」

 ラグが物凄い形相でアルさんに詰め寄った。
 先を越されてしまったが私もきっと今同じような顔をしているのだろう。

(だって、金髪の男の人で高貴そうで囚われてるって、エルネストさんとしか思えないよ!)

 まさか、たまたま立ち寄ったこの場所で彼らしき情報が得られるなんて……!
 アルさんはそんな私達の勢いに少したじろぎつつ背後の店を指差した。

「ここ」

 ラグはそんなアルさんを除けるようにしてピンクに塗られたその店のドアを開けた。私もそれに続く。

 そこは雑貨屋さんのようで街の人と同じ色鮮やかな服を着た人形や木彫りのおもちゃ、可愛らしいアクセサリーなどが並び壁には複雑な模様のタペストリーが飾られていた。こんな時でなければゆっくりと見たいお店だ。

 カウンター向こうにいるピンク色の服を着た恰幅の良い主人は勢い付けて近づいてくるラグのその形相に瞬間ぎょっとしたようだったが、私と目が合うと「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた。

「何をお探しですかな?」
「盗賊に金髪の男が囚われてるって話は本当か?」

 唐突に訊いたラグに主人は案の定不審げな表情をしたが、後から入ってきたアルさんを見て急に呆れたように肩をすくめた。

「なんだい、兄ちゃんの連れかい? 子供を連れてくるんじゃなかったのか。まさかその子ってんじゃないだろうね」

 そう言って主人は私を指差した。
 少しムっとするが余程アルさんにしつこくされたのだろうか。アルさんは慌てたように手を振った。

「違う違う。後で絶対連れてくっから、だからちゃんと取っておいてくれよ! んで、さっき聞いた賊の話あったろ? こいつらにも話してやってくれよ。その囚われてる金髪の男ってのがこいつらの知り合いかもしれないんだ」
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