初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
気持ちの変化 柊哉side


『君となら上手くやっていけると思ったから結婚を決めたんだ』


嘘だった。


相手が誰でも、たとえ苦手と感じた相手だとしても、自分は結婚していたのだから。

それでも妻になったばかりの馴染みのない女性と上手くやって行くためには、わざわざ本音を言わない方がいいに決まっている。

家庭では余計な争いを避け、トラブルなく過ごしたい。

優しい言葉は、自分の快適な暮らしの為。相手だって同じような考えのはずだ。

恋愛感情のない政略結婚なんてそんなものだろうと。





それなのに……今、隣で気持ち良さそうな寝息を立てて眠っている香子を見ると、自然に頬が緩むのを自覚する。

可愛いと思う。触れたくなる。そっと手を伸ばして、華奢な体を抱き寄せた。

一緒に生活を始めてまだ日が浅い。お互いを理解しているとは言えないのに、この女性が自分の妻なのだと実感していた。

大切に守りたいと思う。

自分がこんな気持ちになるなんて想像してもいなかった。


結婚は仕事の延長上のもの。恋愛感情などなくても家庭は築けると信じていたから。


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