初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
高まる想い
柊哉さんへの恋を自覚し抱き合った夜から、私たちの関係はゆるやかに変化していた。

ふたりの間の距離が少しずつ縮んでいると実感する。

夕食のあとは柊哉さんの淹れたコーヒーを飲みながら、リビングのソファーに並んで座っておしゃべりをするのが日課になっていた。




「柊哉さんと真田課長は個人的に親しいの?」

「同期入社なんだ。新人研修の頃から気が合って、プライベートでも付き合ってる」

「同期? そっか、柊哉さんにも新人時代が有ったんだよね」

マナー研修とか、客先対応のロールプレイングとか、普通の新人と一緒にやったのかな……新入社員が避けて通れない忘年会での余興もやったのかな?

私のときはみんなで当時流行りのダンスをしたけど、柊哉さんがそんなことをするのは想像できない。

微妙な顔をしていたのか、柊哉さんが苦笑いを浮かべて言った。

「何か変な想像してるだろ?」

「柊哉さんと真田課長はどんな余興をしたのだろうって考えてました」

「ああ……」

嫌な思い出なのか、柊哉さんはげんなりとした顔になった。

「ああいうのはいい加減廃止にした方がいいよな」

「私も新人当時はそう思ったけど、今思えば良い思い出だし、見るのは楽しいから有ってもいいかな。それで柊哉さんはどんな出し物だったの?」

「……黙秘する」

「ええ? どうして? そんな恥ずかしい余興だったんですか?」

ますます興味が湧いて来る。だけど柊哉さんは「察してくれ」と頑なに口を閉ざし答えてくれない。
とうとう強引に話題を変えて来た。

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