策士な課長と秘めてる彼女

たのもう

一時間散歩をして帰宅し、それぞれシャワーを浴びて朝食を摂った。

ミルクとハチミツたっぷりのフレンチトーストは日葵の得意なメニュー。

しかし、細マッチョな陽生は甘いものが苦手かもと思い、日葵は他にもフワフワのスクランブルエッグとウインナー、サラダを準備した。

「どうして俺だけフレンチトーストがない?」

「男の人は甘いものが苦手かと思って・・・」

「それは偏見だな。俺は何件も梯子して味比べをするほどフレンチトーストにはうるさい」

「えっ、本当に?」

日葵にとって、その話は意外の一言だった。

陽生の分ももちろん作ったのだが、彼が食べなければ全て自分が食べるつもりでいた。

しかし、初めから批評されるとわかっているのに、自ら差し出すのは正直緊張する。

「ほら、よこせ」

「いや・・・フレンチトーストマスターに食べさせるほど大層なものでは・・・」

嫌がる日葵を無視して、陽生は正面からフレンチトーストののったプレートを奪いさった。

「・・・うまい」

日葵のフレンチトーストは、母方の祖母直伝のレシピ。

戦後間もない頃に、その頃は珍しいフレンチレストランを祖父と営んでいた祖母。

日葵が両親と遊びに行くと、必ず出してくれたフレンチトーストのこの味が、実は日葵も自慢の逸品なのだ。
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