策士な課長と秘めてる彼女
「陽生さん、眠いでしょう？無理してついてこなくても良かったのに」

「女の子に大型犬の散歩をさせておいて、自分は寝ているなんて失笑ものだろ。それにこのところジムにも通えてなくて身体がなまってたから丁度いい」

大型犬、いや、小型犬でも、ストレス解消のためには朝夕２回の散歩が望ましい。

訓練所の日は、１日中体を動かしているので散歩は省略しているが、それ以外で雨の降らない日は、日葵は必ずその日課をこなすようにしていた。

「日葵が元気なのはこの日課のお陰だったんな」

陽生の言葉に日葵は笑顔で頷く。

「身体にもいいし、メンタルにも効果覿面ですよ」

柊のリードを持ってくれている陽生の表情も心なしかイキイキとして見えた。

進むこと数キロ。

「あら、格好いい旦那様ね。結婚したの？」

と、すれ違う顔見知りのウォーキング夫婦に声をかけられた。

「いえ・・・」

否定しようとする日葵を遮り、

「ええ、妻共々今後ともお見知りおきを」

と、あっさりと認めてしまった陽生の脇腹を日葵は夫婦から数メートル離れた後にどついた。

陽気に笑う陽生を見て、日葵は幸せを感じた。

こうして柊と過ごす時間を否定せずに共有してくれる。

゛この人が好きだ゛

この瞬間、

日葵は疑うことなく自分の気持ちを受け入れることができた。

< 67 / 149 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop