副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
啓太さんと再会して、一年と数ヶ月経った。
すっかり秋も深まり、朝晩の寒さは、早くも冬を感じさせるようになった頃、私は無事に、双子の赤ちゃんを出産した。

一卵性の女の子で、啓太さんが〝唯 ユイ〟と〝愛 アイ〟と名付けてくれた。
この子達は、唯一の存在で愛しい子達という、啓太さんの想いが込められている。
私もすぐに、この名前が好きになった。



「美鈴、僕は美鈴に出会えて、本当によかった。愛してるよ」

妊娠しても、出産しても、啓太さんは私を大事にして、変わらない想いを伝えてくれる。
だから私も、私にできる精一杯で返す。

「私も、愛してる」

想いを伝えるようにぎゅっと抱きつくと、啓太さんも優しく包み込んでくれる。


啓太さんのまっすぐな求愛に、今日も、明日も、これからもずっと応えていく未来に想いを馳せれば、限りない幸せを予感させてくれる。

この幸せを、手放さなくて本当によかった。




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