副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
美鈴と一緒にすごす時間が増えるほど、ますます彼女のことを好きになっていった。
それと同時に、なぜ契約の婚約者なんて持ちかけてしまったのだろうと、後悔がばかりが膨らんでいった。

美鈴に近づけたと浮かれていると、次の瞬間、これは演技なんだと思い知らされ、辛くなるばかりだった。

〝婚約者なんだから〟と、美鈴の左手に指輪をはめた。
これは、僕の本心を込めたもので、美鈴が指輪をはめてくれているのを見るたびに、少しだけ安堵していた。

彼女にも説明していた通り、今取り組んでいるプロジェクトが片付いたら、僕は美鈴との契約を破棄して、改めて自分の本当の気持ちを伝えると決めていた。
美鈴を困らせることになっても、自分のそばにいて欲しいと、ストレートに懇願しようと。

それが、あんなことになるなんて……




< 224 / 239 >

この作品をシェア

pagetop