完璧美女の欠けてるパーツ
出会いは

月曜の午後3時
課長からの添付ファイルをチェックしてると、どこからか浮かれた声が聞こえてきた。

「えー。あそこのホテル取れたの?」
「ディナーも楽しみだね」

クリスマスの話だろう。
ウキウキ女子社員の声がジングルベルの曲に聞こえる。

ディナーでホテルでヤル事は……うらやましい。

コーヒーでも飲もうかと席を立つと、後輩のゆっちゃんが話しかけてきた。

「梨乃さんの予定は?豪華ディナーからのお泊りですか?」
目をキラキラさせている。
「特に予定はないの。ひとりで過ごす」
正直にそう言うと
「またー!梨乃さんって本当にミステリアス。ハイスペックのイケメンとのデート現場!しっかり見つかってますからね!」と言われた。
きっとそれは人違いだけど、噂として広がっていた。

また出会いが遠くなる。
否定すればするほど、まともに取り合ってもらえないので、梨乃は苦笑いでコーヒーマシンの元に行く。
するとカップ片手に係長が困り顔で立っていた。
どうやらカプセル型のコーヒーマシンの調子が悪く、点滅はするけれどコーヒーが出てこならしい。

「壊れたかな、とりあえず総務に持ってくか」

「あ、私が運びます」

「森田さんに持たせるなんて、社の男性たちに怒られるよ。僕が行くから、森田さんは隣の企画部でもらってもいいし、カフェでまで行ってテイクアウトでもいいんじゃない?20階にコンビニコーヒーもあるよ」

たしかに名案。
ポケットにスマホも入ってるから、このまま行こうか。

「係長の分も買って来ましょうか?」

「僕は総務で飲んでくるからいいよ」
席に戻ってもクリスマスの話が続くので、梨乃はカフェにしようかコンビニにしようか悩んでから、結局20階にあるコンビニに向かった。

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