目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。

秘書

朝食を済ませ、身支度を整えると、蓮司さんと一緒に散歩に出た。
昨日も天気が良かったけど、今日もまた快晴で、森の中の空気も美味しい。
初夏の青空と覆い繁る森の緑の絶妙なコントラストを眺めながら、私達は並んで歩いた。

そして小一時間経ち、別荘に戻ってくると、白い車が駐車場に止まっているのが見えた。
国産のステーションワゴンは、黒いSUVの隣に整然と停められていて、私達が近付くと運転席から女性が降りてきた。

「おはようございます。社長」

その女性は、歳の頃は30代後半か40代前半。
グレーのパンツスーツに、5センチ程のパンプスを履き、さっぱりとしたベリーショートの髪にウェリントン型で黒縁のメガネをかけている。
デキる女感を醸し出しつつ、抜け感も忘れない……という働く女性の頂点を極めたような女性だ。

「おはよう。三国さん」

「おはようございます」

三国さん、というのか。
彼女の名前と顔を記憶しながら、蓮司さんに続いて私も挨拶を返した。
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