契約結婚の陰に隠された真実の愛〜言葉に出来ない気持ち〜
第八章 ライバル出現
買い物の帰り道「久しぶり」と声をかけて来た男性がいた。
以前付き合っていた元彼、飛鳥渉三十七歳。

「亜実、元気だったか」

「渉、十年ぶり?相変わらずかっこいいわね」

「まじか?じゃあまた俺達付き会おうか?」

「残念ながら私既婚者なの」

「えっ結婚してるのか?」

「ほら」

私は左手の指輪を渉に見せた。

「そうか、いい女だもんな、他の男が放っておくわけないか」

「そんなことないけど・・・」

「旦那いくつだ」

「二十七歳」

「えっまじか、ひと回りも下じゃん、押しかけ女房か?」

「そんなわけないでしょ?向こうから言われたの」

渉はあまり驚いた様子はなく頷いていた。

「毎日愛してる愛してるって言われてるのか」

「一言も言われたことない」

「愛してるとか大好きだとかお前がいないと生きていけないとか全然言われないのか」

「あ〜っ、久しぶりに聞いた愛の言葉」

「お前らうまくいってるのか?」

「実は契約結婚なの」

渉は驚いてどういうことかと不思議な表情を見せた。

「好きな彼女はお許し得られなくて、私は会長のお気に入りだから」

「会長?」

「桐生不動産の会長よ」

「じゃあお前の旦那、桐生不動産社長の桐生柊か」

「あっ、そうそう」

「じゃあ、プラトニックの関係か」

「そういうわけじゃないけど・・・」

「お前、好きでもない男に抱かれてるのか?」

「露骨な言い方しないで、私はちゃんと柊さんのこと好きよ」

「相手はどうなんだ」

私は首を傾げた、その様子に渉は急に真面目な表情に変わり、私を抱き寄せた。

「渉?」

「俺達やり直そう」

「何言ってるの?からかわないで」

私は渉から離れて走り出した。

「亜実」

渉は私の走り出した後ろ姿に声をかけた。

「俺、本気だから・・・」








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