消えかけの灯火 ー 5日間の運命 ー
1日目



7月1日火曜日。
昼休み。俺は一人屋上で昼食を取ろうとざわざわと賑わい始めている教室をあとにした。
今日の昼飯は……コンビニで買ったメロンパン。

やっぱカレーパンにすればよかった。

そんなことを考えながらコンビニの袋を片手にダラダラと廊下を歩いている俺。
今俺が歩いている左側が教室、右側にはグラウンドが見える窓が天井まである。
この校舎の窓はやたらでかくて、数も多い。
教室がある廊下にはずっと窓が続いていて、景色の見渡しがよすぎる。
明るくて圧迫感の無い創りなのは良いが、なんだか俺には落ち着かない。
すると、ぼーっとけだるげに歩く俺の背後から声が聞こえた。

「ねぇ」

女の声だ。
でも俺は完全に自分が呼びかけられているなんて思いもせず、気にすることなく廊下を進んでいく。
俺に声をかけてくるやつなんていないしな。
心の中でふっと自分を嘲笑う。

「ねぇってば!」

強い口調の声がまた背後から聞こえてきて、まさかと思いながらも俺は後ろをちらっと振り返った。
視線の先にいたのは、キッとした鋭い目つきで俺の顔をじっと見る、女子生徒。
正直驚いた。俺のことを真っ直ぐに見てくる奴なんて、しばらくいなかったから。

てかなんか、この子見たことある。
確か…………。あれ、誰だっけ。

思い出そうとしたが、やはり俺の記憶力的に無理だった。
俺は声をかけてきた女子生徒と目を合わせ、不審なものを見る目で聞いてみる。

「……なんか用?」

すると、女子生徒はスッと人差し指を俺に向けて言う。

「それ以上行くと、危ないわよ」
「……は?」

女子生徒の発言が意味不明で、俺は顔を歪めて「何言ってんだこいつ?」という表情をしてしまった。

「だから。危ないのよ、そこ。」
「……何がだよ?」

なんなんだこの女……。

「いいから、こっちに来て」

女子生徒が発言するたびに、不信感はより増していく。
俺は関わらないでおこうと女子生徒を無視し、止めていた足を動かし始め前へと進む。すると。
ガッと強い力で右腕を掴まれ、ぐんっと勢いよく後ろへと引っ張られた。
その反動で俺は持っていたパンが入っているコンビニの袋を落としてしまった。

「……はっ!?」

突然の事で俺の頭はついていけず、引っ張られるがままに後ろへと身体が持っていかれる。

その瞬間だった。


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