悪魔になった天使
天使となった少女

鮫風璃珈


 四つの見張り台であるお城その中央に屋敷があった。鮫風家本部、別名鮫風邸である。
 みた限り横に五十メートル縦に四十メートル、高さ二十メートルと三階の建物にしてはかなり大きい。窓の数も数えきれず、ただその圧力だけが見るものを圧倒してくる。
 そんな中ひとつだけ下の階の一番左奥の窓だけが開いている。覗くと一人の女性がツインベッドで目覚まし時計を握りしめて寝ている。
 ジリリリリと、勢いよく鳴り響き出した。
 「う~ん、まだ眠いよー。」
 それと同時にドアをコンコンコンとノックする。
 「璃珈、起きてるんでしょ。さっさと着替えて出てきなさい。輪廻様も含め皆待ってるんだから。」
 目を開いて目覚まし時計を見ると時計のガラスはヒビが入り音もわれていた。
 「分かりました。御姉様。すぐに向かいます。」
 パパっと着替えを済ませて部屋を出ようとドアを引くと、バッシャーンと、勢いよく顔面に水をぶっかけられる。
 「わっ!な、何みず?」
 「何寝ぼけているの?冷水よ。それよりも早く行くわよ。」
 姉の言葉にちょっと苛立ちを覚えたが、まずは顔を拭くものが必要だ。周囲を見渡すと、さっきドアノブを引いたとき落ちたのだろうタオルが床にあった。すぐに拾い顔を拭くと姉の後ろに駆け足でついていった。
 長い一本の広い廊下を進むと大きな扉が目の前に現れた。
 「着いたわよ。」
 そして、扉を押しあけると、中には女性たちが、その中に10人ほどの男性が混じっている。
 「レイラにしては、遅い到着ですね。」
 「璃珈が、起きてくるの遅いんだもの。仕方ないでしょ。」
 そう言って姉は顔をこちらに向ける
 「璃珈、早く入って。」
 扉の上には鮫風家会議室と記されていた。
 中に入ると全員がこちらに目を向け奥の方へと道を開けた。その道を歩くなか、周囲にいた男たちからヒソヒソと喋り声が聴こえてくる。
 「やっとお出ましかよ。妹を見捨てて任務から帰ってきた姉妹だ。よう、顔が出せたもんだぜ。」
 「妹を守れなかった奴が次期当主とは笑いもんだぜ。」
 「次期当主?そんなわけないだろ?なんでそんな奴が次期当主になれるんだよ。」
 「いいや、間違いなくあいつが次期当主になるに決まってる。強いものが当主に選ばれんだからな。」
 そんな話に私は苛立った。今すぐにでも殺したい。そう思った。だが
 「昔輪廻様が輪名様と戦争したとき、母親である輪名様の屋敷でおとなしく部屋で隠れているところを、輪廻様の部下に見つかり殺されかけたとき、返り討ちにしたのがあいつだって、まだ四歳にして妖刀血鮫を手にとって、輪廻様の部下を全滅させたって話だよ。共食いってもんじゃない。あいつは、血を求めたんだ。血鮫に魂を売った悪魔だよ」
 その話に私は泣きそうになった。
 確かに私は殺されかけたとき側にあった刀を手に取った。そしたら、喉が無性に乾き始めその先は覚えていないのだが……。
 「璃珈、今は堪えて。」
 姉はそう言って前を向くように施す。
 奥に行くとふたつ座布団が敷かれている。
 そこに姉と一緒に座ると、周囲を見渡していた女性が深呼吸して
 「輪廻様のおなーり。」
 と合図が下り全員頭を下げた。
 襖が開き輪廻様が歩く足音だけが畳に響く。
 足音が止まると
 「皆頭を上げてください。」
 全員頭を戻すと、そこには綺麗な十二単に包まれた美しい女性が扇子を開き口元を隠すように持っている。
 「これより、次期当主を私から発表させていただくわね。その前に璃珈、レイラ、先日の任務ご苦労様でした。璃珈名のことは残念に思いますが今は、悲しんでいる暇はありません。亡き妹のためにもあなたたちは頑張らなくてはならない。私たちもだけどね。」
 輪廻様の顔には悲しみより、憎しみの方が勝っているように見える。
 「では、発表をさせていただきます。璃珈、あなたに次期当主をお願いしたい。貴方しか適任が居ないの。お願いできますか?」
 私の名前を呼ばれ、少し驚きながらも、
 「私でよろしければ、その座を前進前礼を持って承らせていただきます。」
 そのとたん、扉にいた男たちがまた、ヒソヒソと話始めた。
 「そこのものたち、何かあるのなら言いなさい。隠すのはよくないわ。」
 輪廻様に指定され一人の男が代表として発言した。
 「鮫風璃珈様では、この先平和に導くことができるのか私同不安なのです。その理由として、目の前にいた妹を守れなかった、見捨てた者にこの先鮫風家の全てをかけるのはどうかと思う所存です。そこをどうお考えか、璃珈様、私たち一同が納得する答えをください。」
 信頼がないのはわかっている。男たちだけじゃない。すべての鮫風家の者がそう思っているに違いないのだ。
 「私は、この先鮫風家のために全力で当主として指導をしていくつもりです。妹を守れなかったこと、それ以上に、皆は昔のことも引きずっているはず。信頼がないのもわかっています。ですが、私は、この先全てを守るためならば、自分の大切なものを切り捨てる覚悟です。愛する人がいたとしても、邪魔になるなら切り捨てる。妹だろうと、あなたたちだろうと、私は、一人の鮫風家に過ぎず、また、一人の鮫風家に産まれたくの一にして次期当主なのだから。戦いたいものがいるのなら、ここで、殺してお見せいたしましょう。」
 最後はただの脅しになってしまった。だが、男たちはそれだけで納得したようだ。
 「強きものは強さに溺れる。だが、弱さを知った強きものは、更なるいや、真なる強さを知ることになる。まさに次期当主。覚悟は出来ておいでだ。悲しみも全て背負う。邪魔になるなら、悲しみに変えていくとは、しかし、その悲しみ、一人で背負わせることはありません。全員で背負い会いましょう。」
 全員が頭を下げた。
 その光景は、全員が信頼をこの先の未来を見据えた覚悟だと私は思った。もし、あの片割れの二人がこんな光景を見たら、なんと言うのかな。海風、黒霧、あなた達は笑うかしら
 今頃あの二人は何をしているのかな。
 追放されし黒霧、それを見張るために追放と言う形で任務を任された海風。あなたたちは何を見つめているのか、どこに身を隠しているのか。
 
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