悪魔になった天使
 山の中で一人の女性が古小屋で生活を暮らしていた。古小屋の屋根にはたくさんの蜂の巣があった。
 「今日は天気がよろしいわね。ねぇ、アンデッドクマンバチ。」
 右手の掌を顔の前に出すと一匹の蜂が止まった
 「そう、鮫風璃珈が次期当主に選ばれたのね。主もきっと大喜びでしょう。火鉢家もこれで安泰になるはず。まぁ、私が安泰を築くのだけれど、表のあの人はどうするのかしら。」
 そこへお腹を押さえて一人の女性が向かってくる。
 「我が主、海風様。今お戻りですか?」
 そう言って、女性の方へと近づく。
 「お腹減ったよ。何かない?お団子とかお団子とか。」
 お腹をすかした海風はそう言って女性の左肩に体を預けた。
 「今ご用意致しますわ。海風様。部屋の隅で休んでいてください。」
 「わーいやったー!じゃあ、待ってるね。」
 そう言って古小屋の中へと、走っていってしまった。
 「ふふふ、可愛い主ですこと。さて、腕を振るいますか。」
 手首まである袖をまくり急ぎ足で古小屋へと、入って行く。
 厨房で女性は何やら鼻唄を歌いながら手際よく団子を作っていた。
 みたらし団子に三色団子、はちみつで作った団子などそれらを皿に並べる。
 「主ならきっと喜んで下さるはず。」
 頬を染めながら海風が待つ部屋へと運ぶ。
 襖に手をあてスライドさせると、海風がテーブルの横で待っていた。
 「出来上がりましたよ主。どうぞ召し上がって。」
 そう言ってテーブルにお皿を置くとすぐに手をつけてきた。
 「頂きます。,,,う~んおいしい。今日のはいつにましておいしいよ。結」
 「 本当ですか。よかった。主に誉められなかったらどうしようかと思いました。」
 笑いながら、海風の顔をまじまじと見つめる
 食べている主が一番好き。
 「そういえば主、本体様は今日時期当主に選ばれたそうですよ。」
 「ウッン!それ、本当?」
 海風は体をのけだして聴いてくる。
 「はい、ちょうど主が帰ってくる前に蜂から聞きました。これで火鉢家も安心してサポートにまわれますし。」
 その話に海風は、しんみりとした。
 「その話だけどさ、私、鮫風家に協力するつもりないんだよね。」
 その言葉に驚いた結は
 「何でですか、黒霧璃珈を探し見張るのが主なら、鮫風家に従うのも主の役目なのでは?」
 「うん、そうなんだけど、一応追放って扱いでしょ。なら、それを使ってちょっと調べたいこととか、他に見張ってるやつもいるから、それに、部下もたぶんこっちに来ると思うし。」
 それには結も不機嫌になり
 「なら、鮫風家に刃向かうと、そうお考えですか?」
 海風は小さく横に降った。
 「そんなこと、お互い望んでないよ。ただ、輪名様が操られてたら、そう思っただけ、璃珈名の時襲ってきたのは奴等じゃない。輪名様の鮫風家の反乱軍反鮫風家の連中だった。」
 それに結は驚きならば、もしかしたら、と脳裏に嫌な予感を覚えた。
 「考えてること、そのまんまだよ。今日調べたけど、璃珈名の死体は見つからなかった。要するに、輪名様がもしくは部下が回収していったってことだね。」
 結は目を瞑り海風に聞いた。
 「なら、この先の戦が起きればあるいは」
 「璃珈名が生きてるとわかれば、輪廻様も、鮫風家もヤバイことになる。鮫風姉妹戦争が起きてしまう。」
 操られているのなら、また、輪名様も、傀儡の使い手。操ることはいくらでもできる二代目元当主
 「璃珈名と、本体が戦う前に、その黒幕を探すのが本来の黒霧と私の役目。なら、こっちがメインになる。追放された黒霧の任務は、これじゃなきゃ出来なかった。だから、私も追放という扱いで見張り要するに」
 「奴ら、神風家の見張りですね。どこに糸を忍ばしているのか。私たち、火鉢家も協力させていただきます。」
 そう言って胸の前で両手を握りしめ目を瞑った。
 「鮫風家の動き次第でこちら側も動かないといけないから、今のところは、自由でいいよ。」
 海風は、天井を見つめてそう答えた。
 心配なのは、黒霧がどこにいるのかだ。
 「早くあの人を探さないといけないね。」
 火鉢はなんのことかわからなかったが、海風の顔を見て寂しさが伝わってきた。
 次の日、海風は散歩してくるといって、小屋から出ていた。
 今日もまた天気がよかった。
 山の頂上で花畑をしている火鉢は、小屋にある如雨露を四つ出してきて水を入れた。
 それを持って、頂上への道を歩いていった。
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