三日間の幸福
いつのまにか、私は深い眠りについていた。

目を覚ますと朝9時を過ぎていた。
やばい。

急いで起き上がる。
と、ベッドの下の布団に爆睡している平良。
寝心地悪そうなのに、スヤスヤとよく寝ている。

変わらないなあ。

私は毎日毎日すごい寝相で寝てる平良を見ていた。

「遅れるよ」
そう言って起こすのが私の役目だったっけ。

あの頃はあの頃で幸せだったなあ。

シャワーを浴びる。
メイク道具どころかメイク落としも化粧水も持ってきてない。

残念な顔。

仕方ないか。

簡単に身支度を終える。
平良はまだまだ寝続けそうだ。

あの頃は真っ黒に焼けてたけど、もう全然野球してないのかな?
いつのまにか、普通の肌の色だ。

普通のサラリーマンだ。

平良は大学院まで進んだ後、お菓子メーカーの研究職に就いた。
今は大阪に住んでいるはずだ。

高校卒業後、平良は国公立大の工学部に、私は女子大の現代社会学部に進学した。

大学時代、同棲していた。

でも大学3年の秋に突然別れた。

大学は違ったし、平良は滅多に実家に帰ってこなくなったから会うこともなくなった。

全然会わなかった。
昨日まで。

ずっと会わなかったのに、昨日突然出会った。
そして空白の時間を感じないほど、あの時と同じように話せた。

普通だった。

平良はいつだって変わらない。
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