ボクソラ☆クロニクル

彼を慕う人々




 ○○○


 翌朝。ちょっとだけ早起きをした私は、カルロスさんにお願いして給仕当番の構成員の方々と一緒に朝ごはんの支度を手伝わせてもらうことにした。

「ではまずこのジャガイモの皮剥きを頼む」
「了解です。それにしても、すごい量ですね」

 目の前の、文字通りの『イモの山』を前に少々たじろぐ。
 教会のお手伝いはしたことがあるけど、それでも一度にこんな量を処理したことはないかもしれない。

「男所帯な上に年齢層が若いせいでな。本当はもっと沢山、肉を積んでおきたいんだが如何せん単価が高い。だからイモで腹を膨らませるんだ」
「それでこのおイモの量なんですね。がんばります」
「やり方は分かるな? 俺は向こうで別の仕込みをしているから、終わったら声を掛けてくれ」
「分かりました」

 調理場の隅っこ。
 置いてあった木箱に腰を下ろして麻袋に入れられた大量のイモと向かい合う。右手には包丁を持ち、ショリショリと手早く丁寧に皮を剥きながら適宜育った芽を取り除いていく。

 サミュエルさんから洗濯禁止令が出てしまった今、専門性の高い知識などない私に出来るのとはこういった『誰にでも出来る仕事の1つ』でしかない。


 ショリショリ。ショリショリ。

「ニーナ、次。玉ねぎの皮剥き頼む」
「はい」

 ショリショリ。ペリペリペリ。

「次はゆで卵の殼むき」
「はい」

 コンコンコン。ペリペリペリペリ。

 黙々と作業に没頭している中、不意にはたと我に返る。
 ……すごい。この空間、無心で仕事をしていられる。
 カルロスさんがそこまでおしゃべりな訳ではないっていうのもあるんだろうけど。気を抜くと何時間でも無心で手を動かしていられそうだ。

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